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「……派手だなぁ」
「いやいや。目立ってなんぼですよ!」
「でも派手だなぁ……」
本乃社長のご先祖様はゴールド浴衣が気になるようだ。うん、派手だ。
親父と母さんは、ご先祖様たちと並んでベンチに座って焼きそばを食べている。
「お祭りは雰囲気だからな。好きなものと並んで焼きそば食べつつ人波を眺める。これぞ風流!」
多分とにかくイチャイチャしたいだけだろ? さて、あとは大と徹か。
「お前ら、大手出版社に入社して勝ち組になったのに、なんで更に陰薄くなってんだよ! 出番の減り方えげつないぞ!?」
「だって出番決めるの俺らじゃないし……」
そういうことは思っても言っちゃいけないだろ? 仕方ないだろ? 今の主人公は小学生の翡翠なんだから。
「さて、最後は嬢ちゃんと彼女さんな」
「珍しいね。最後二人一緒って」
「でも私、嬉しいかも? おじさんとおばさんってご先祖様もカップルなんでしょ?」
ウキウキする薫蘭風ちゃん。薫蘭風ちゃんは毎年、ご先祖様とBL談義をしていたが、もういいのかな?
「うん。多分、二人は結婚するからな。ご先祖様含めて話してもいいって俺の判断だよ」
「火の玉屋のおじさん、そんなの分かるの?」
「お兄さんな。まぁこんな商売しているから波長の流れくらい見えるさ。ほらよ」
俺と薫蘭風ちゃんのろうそくに火が灯る。
「あら可愛いわね」
薫蘭風ちゃんのご先祖様は俺のご先祖様を見て開口一番そう言った。
「そうでしょ? これでも村一番の美少年だったんだよ?」
「美少年!」
薫蘭風ちゃんと薫蘭風ちゃんのご先祖様の声が重なった。流石BL好きだ。美少年に食いつく。
「僕も可愛いけど、瑠璃くんも可愛いでしょ? 薫蘭風ちゃんが瑠璃くんを選んだ理由、よく分かるよ」
相変わらず俺のご先祖様は斜に構えている。
「瑠璃くんは性格も可愛いから」
薫蘭風ちゃんは俺の腕を掴んで嬉しそうに微笑む。
「じゃあ今年は二人の惚気、一晩聞かせてよ」
「私も聞きたい!」
「あのねあのね!」
薫蘭風ちゃんのマシンガントークが始まる。それを俺のご先祖様は俺の膝の上で聞いて、薫蘭風ちゃんのご先祖様は薫蘭風ちゃんの膝の上で聞いた。
ドンッ。花火が上がる。今年の宵宮の夜もゆっくり更けていく。
と・く・べ・つ8おしまい♪
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