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静寂と情動
彼女と出会ったのは、まだ夏の気怠さが残る
八月の終わりの頃だった
僕は溢れ出る汗をやや強引にシャツで拭っていた
彼女は太陽の光の中、汗一つかかずに立ち尽くしていた
何故か彼女のまわりだけ違う世界のようで、僕は引き寄せられるように彼女の方へ歩みを進めていた
彼女は僕が歩み寄ってくる事を初めから知っていたかのように、突如こちらを向いて
「ここは少し冷たいわ、少し歩かない?」
といきなり話しかけてきた。
僕は自分を多少賢い論理的な人間だと自負していたが、彼女の言葉はいとも簡単に僕の常識を覆してしまった。
僕は「ああ」
としか返せなかったことに酷く自尊心を傷つけられ、何故か嬉しさを感じていた
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