天才たちの住む島

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天才たちの住む島

 自宅のベランダで、天体望遠鏡を使って夜空の星を観察する。  現在、大学院二年生で研究真っ只中。行き詰まった時や精神的に疲弊した時は、こうして星空を眺めて癒されていた。  5月のこの時期に見れる星空も綺麗だ。  北斗七星から春の大曲線を結んだ先に見られる二つの一等星『アークトゥルス』と『スピカ』。今年のこの時期は金星や水星も見られる。  今日の月は満月が微妙に欠けている。予報では、真の満月は明日見れるらしい。  明日か。私は少し嫌な気持ちを抱いてしまった。せっかくの愛しの時間が台無しだ。  すると、ポケットにしまったスマホがバイブを鳴らす。手に取ると同じ研究室の王理くんから連絡が来ていた。 『ちょっと研究関連で徹夜するので、明日の集合は午後でもいい?』  彼の連絡に対して『了解』と返答する。せっかく忘れようとしていた明日の用事が再び思い出され、憂鬱な気分になった。 「はあー。午後に集合なら、今日は夜更かしして天体でも観察しようかな」  気を落ち着かせるために、私は再び天体望遠鏡を覗いて星空を眺めた。
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