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「あのさ、お話じゃなくて、宝探しをしようよ」
「なにそれ?」
はずんだ声にキラキラした瞳。説明する前から、オッケーだと言っているようなものだ。
「この公園の中で、宝ものをかくしっこして、さがすゲームだよ。俺がかくしたのをみつけたら、次はキミがかくす番だからね」
「わかったー。でも、宝もの、ないよ」
俺は立ちあがり、砂場にむかった。女の子もついてくる。俺はだれかが残していったプラスチックのスコップを手にとった。
「この黄色のスコップを宝ものってことにしよう。じゃあ、かくすからね。いいよって言うまで、ベンチのところでうしろ向きになって待ってて」
「はーい」
機嫌のいい返事を残して女の子はベンチへと駆けた。影がはずむようについていく。
えっ……。俺のまぶたは驚きで大きく広がった。女の子の影に、翼が生えている。
まばたきを何度もし、目をこすっているうちに、女の子は木の影にもぐりこんでしまった。ベンチに座る女の子のスカートが、ふわふわとゆれる。
ああ、きっとさっきのは、スカートと見まちがえたんだ。目の錯覚だな。仕事でつかれてるんだよ。じゃあ、気分を入れかえて、スコップをかくすとするかな。
なかなかみつからないと、おもしろみも失せるだろうと思い、すべり台の上に置くことにした。子供のころは急で長く感じたステップが、やけに短い。音を立てないように、そっと登る。軽く吹いた風がさわやかだった。
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