みーつけた

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「悪魔かあ。そんなお話、知らないなあ」 「じゃあ、魔女でもいいよ」 「えーと、どんなのがあったっけ」 「もーう。おにいちゃん、子供のころ、絵本読まなかったの? 白雪姫とか、ヘンゼルとグレーテルとか、あるじゃなーい」  大人の知らないことを自分が知っていてうれしかったのか、女の子は得意気に頬をあげる。おしゃまな口ぶりも愛らしい。  同年代の女性には口ごもることの多い俺だが、幼い子が相手だとスラスラしゃべれた。  だが、俺は落ち着かなかった。  じつの父親が娘と遊んでいても、不審者として通報される時代だ。よれたスーツのなじんだ二十代男性と、四歳ほどの女の子の取り合わせは、人々の目にどんなふうに映るのか。想像すると、気が気じゃなかった。  まずは、ベンチで隣り合わせに座っているこの状況をなんとか変えよう。もうちょっと距離をとって、この子を見守ることができる遊びってないかな。鬼ごっこだとあやしさは倍増だし、かくれんぼをするには、この公園はせますぎる。  めぐらせた視線が砂場でとまった。あ、いいものがあるじゃないか。
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