みーつけた

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 目が覚めた。俺はベッドに身を横たえていた。白いカーテンがぐるりとまわりを囲んでいる。悪魔に刺されたのに、命があるとは意外だった。しかし相手は悪魔だ。俺に呪いをかけているかもしれない。  体を起こそうとしたら、腹に鋭い痛みが走る。うっ……、ともらした声を聞きつけたのか、カーテンが開いた。 「ああ、動かないで。大手術でしたね。先生からくわしい説明があります」  ナースキャップを頭にのせた女性が背中を見せ、すぐに医者が現れた。 「あなたはおなかを刺されて、刃は胃に達していました」 「重傷だったのですね」 「ええ。傷口は深く、出血も多量でした。それよりも……」  医者は言葉を切り、緊迫した目で俺をみつめた。なにか、マズいことがあったのだな。 「あなたの胃を半分切除しました」 「え……」  女の子に興味を持っただけなのに、胃が……。これが悪魔の呪いなのか。 「これからする話は、あなたの命にかかわることです。どうか、落ち着いて聞いてください」  医者の口から、不吉な知らせが飛び出す気がしてならない。 「傷が深かったため開腹手術となりました。胃の中をみると潰瘍がありました」  しくしく痛んだのは胃潰瘍だったのか。いや、だからといって胃を半分も切り取る必要はないだろう。 「潰瘍のまわりがですね、不自然にでこぼこしていたのです。典型的な癌の所見を呈していました。あ、癌といっても怖がらないでください。再発や転移の心配はありません。早期に発見して、病巣をただちに取り除く。癌治療のお手本のような手術ができましたから。おなかを刺されたことで、癌がみつかるだなんて。本当に、なにがきっかけになるかわからないですね」
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