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「皆様、何かお飲みになりますかっ?」
青春の女神がその笑顔に舞う花弁を手に取ると、ふわふわふわりと氷いっぱいのグラスに入った白い乳酸菌飲料が現れた。
「あら、それではビールなどいただいてもよろしいかしら?」
「私もビールをいただきます」
花の様に笑って応じる青春の女神だが、彼女が手渡す飲み物は不思議とどれも甘酸っぱい。それなのに何故か美味しくて、飲み干す頃には惜しくなる。青春とはそういう物なのか。
「勝利の女神さまはっ?」
「ありがとう。私はアイスコーヒーを」
次に幸運の女神がその微笑みに弾ける光の粒を手に取ると、キラキラキラリとクッキーやチョコがテーブルに並ぶ。
「私も毎年楽しみにしておりますのよ。どうぞお食べになって」
「わーい、いいんですかっ?」
眩しい笑顔の幸運の女神。そのお菓子はどこにでもある定番のものばかりだが、みんなでわいわい摘まむと最高に美味い。幸運とはこういう物なのか。
さて、アナウンサーがノリノリで視聴者を煽り始めた。
『全国一千万の高校野球ファンの皆様、おはようございます!
さあ大変な決勝戦となりました!
なんと山形県代表VS鳥取県代表!
両県からの決勝進出は大会史上初の快挙!まさしく球史に残る一戦っ!
果たして勝利の女神はどちらに微笑むのかっ!?』
「ぬっ」
突然の熱いご指名にも、勝利の女神の頬が緩む事はない。
いや、ストローをがじがじと噛みながら、楽しそうな神々の中で、彼女だけが何かと戦いながら画面を観ている様だ。
『それでは対戦する両校を紹介します!』
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