0人が本棚に入れています
本棚に追加
暑いのは嫌いだ。夏の間はずっとクーラーの効いた部屋に引きこもっていたい。元気な子ども達のように、外で駆け回るなんて考えられない。眩しく照りつける太陽を恨めしそうに見上げ、ため息をつく毎日。なのに何故、夏が終わるのがこれほどまでに悲しいのだろうか。
子どもの頃はなかった感覚。大人になってから無性に夏の終わりが辛くなる。気温が下がり始め過ごしやすくなるのは喜ばしいが、心は全くときめかない。夏が終わればあれよあれよという間に秋が過ぎ、冬がやって来る。早起きの私は太陽より早く目覚め、まだ外も暗い内から仕事に行く準備をする。日の入りも早く、仕事から帰る頃には外は真っ暗。もちろん日中に外に出る事はあるが、心なしか太陽も元気が無いように見える。夏には気力みなぎっていた木々も葉を落とし、冷たい風が心まで冷ましてしまう暗黒の季節が苦手だから、夏が終わるのが怖いのかもしれない。
「よし!」
私は決心した。小学生時代、夏休みを過ごした田舎の祖母に電話をかけ、土日を利用して滞在させてもらう事にした。目的はただ一つ。
「今年こそは、夏を逃がさない!」
最初のコメントを投稿しよう!