ネコカレ

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「わかってない!少なくとも私はエッチだけすれば満足だとか思ってないから!身体だけの付き合いとか辛過ぎるから!もう嫌なの!」  彼は悲しげに項垂れた。しゅんとたれた尻尾が見えるようである。私は絆されぬよう奥歯を噛み締めた。 「俺とのエッチが良くなかったの」  ……そうじゃないだろう。 「俺は良かったよ。エッチもそれ以外も。津島さんの傍は居心地が良くて満たされた。ナーコと津島さんといる時間は幸せで、永遠に続けばいいと思ったんだ」  ……ん?おや?  彼は、私の両腕を掴み、懇願した。 「お願い捨てないで。ナーコと俺の傍にいてよ」 「……えーっと、それはつまり、私と付き合うってことでしょうか」 「それで良いよ。俺はナーコと津島さんしか要らないから」 「何だか釈然としないなぁ」 「ごめんね。俺もこんな気持ちになるのは初めてで、しかも、さっき気付いたばかりだから何て言っていいのかわかんないんだ。取り敢えず下の名前教えて」  そこからかよ。  私は観念し、鞄からスマホを取り出した。 「登録しといて、名前は花梨(かりん)だよ」 「かりんちゃんかぁ、可愛いね、ふふ……」  嬉しそうに微笑む男を見て、込み上げた笑いを押し殺した。そんな簡単にデレてやるかと思う。 「あ、それと青島だけど」  青島とは、さっき学食で一緒にいた友人のことである。 「アイツには近寄らないでね。友人の彼女に手を出すような下衆だから。アイツね、臍が臭い上に早漏だから覚えといて」  自分のことを棚に上げてよく言うよ。しかも、バラしちゃダメでしょ、そんなこと。つか、臍が良い匂いの人っているの? 「花梨ちゃんの臍は良い匂いだよね。もう講義終わり?部屋においでよ、エッチしよう」  彼は私の腰に手を回し、ねっとりと髪に頬を擦り寄せた。まるで猫が甘えるように。
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