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「えっと……、多分そんなには」
「またぼーっとしてたのか?気をつけろよ、変なやつに声かけられるぞ」
「声かけられたことないんで、大丈夫です」
「油断してるときが危ないんだからな」
先輩、そういうところ長男っぽい。
私の座ってるところとちょっと距離をおいて隣りに座っていた。この30センチの距離は2年間縮まらない。私は鞄からシュークリームを出して差し出した。
「二桁のお祝いです。どうぞ」
「うわ、祝わなくていいやつ」
苦笑いを浮かべながら私からシュークリームを受け取った。
「祝いましょ、祝って次にいきましょ」
そう言って先輩より先に袋を開けて一口食べる。隣りにいる先輩もひとくち食べていた。
「先輩って、就活終わってるんですか?」
「俺?うーん、一般企業かなぁ」
「え、もったいない。オケに入るとばかり思ってましたよ」
「趣味の一環としては続けるかな。でも、俺くらいのやつは沢山いるよ。だから音楽に携われる会社で採用されたらいいな、くらいに思ってる」
「私は先輩の音色、素敵だと思いますけどね」
「橘は毎回そういってくれるな。ありがとう」
ずーっと好きな音だもん。
先輩のコンサートなら絶対お金払っても行きます。
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