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____と、素直に可愛らしく言えたら良いんだけど。私はその素直さがないから黙ってシュークリームを頬張った。
「よし、じゃあやるか」
私はウェットティッシュをすかさず先輩に差し出した。
手をしっかり吹いてからヴァイオリンケースをあけて弓の準備をし始めた。弓を張って、松脂を何往復かさせている。こうしないと音が出ないんだと聞かされた。最後に肩当てをセットして立ち上がった。ここまでスピーディーでいつも見惚れてしまう。
リクエストしたのは、まっすぐでキラキラして疾走感あふれる曲。
先輩のヴァイオリン弾いてる姿、いつみてもなんだかキラキラしてるから大好き。
____こういう曲を奏でるの似合いますよ。
_____かっこいいです。
ついスマホで写真に納めたいのに、なんかそれは恥ずかしくてできないまま。毎回時間だけが過ぎていく。私は演奏に耳を傾けた。
「もう一曲、橘が好きなやつ弾いてやるよ」
先輩はそういって、カントリーロードを演奏し始めた。
高校のときに前奏のところかっこよくて好きなんですって話したことをずっと覚えてくれているみたいで、たまーにこうやって弾いてくれる。
弦の弾かれる音ってなんだか心が踊るんだよなあ。
心に染み渡ってくる音は私を穏やかな気持ちにさせてくれた。
「ありがとうございました」
「いえいえ、お粗末様でした」
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