恋に現は抜かせない

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 アイスコーヒーが運ばれてきたのでサイドに置いた。集中したいからイヤホンをして、パソコンで課題をやる。これがかなり集中して作業が捗る。 夢中で作業をしていると、さっと横からケーキを出された。気づいてイヤホンを取り視線を上げると、先輩だった。 「頑張ってるからおごり」  春だから、桜のロールケーキ。先輩は休憩時間のようで隣りに座ってきた。 「課題、何?」 タイトルを見せるとぎょっとされる。 「看護学生大変だな」  「そうでもないですよ。充実してるんで」 『ありがたくいただきます』、とロールケーキをフォークで切って食べる。 「橘は看護師になるのか」 「あ、いえ、私はチャイルドライフスペシャリストっていうのになりたいんですよ」 先輩はスマホで調べていた。 「あ、これか……医療環境にある子どもの心理社会的支援……。へぇー」 「はい、アメリカに行かないと資格は取れなくて、でも四年制大学を卒業してるのが必須なんですよ」 「じゃあ、あと2年でアメリカ?」 「はい、それが目標です」 だから、恋に(うつつ)は抜かせないんだけど、だけど……… この横にいる人がそうはさせてくれない。 「それは……寂しくなるな」
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