恋に現は抜かせない

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 どんな曲を聴いても、先輩が弾いたらどうなるんだ ろうってそういうことばかりが浮かんでしまう。 悪癖だなぁ……  映画の上映が終わってスクリーンから出て、先輩がトイレに行っている間に時間を確認すると、19:00になろうとしていた。あんまりお腹すいでないし、家に帰ってご飯食べようかな。 「待たせた」  戻ってきた先輩にお財布から1000円札を抜き出して渡した。 「いえ、これどうぞ」  「はいはい、」  素直に受け取ってくれて、財布を取り出してしまっていた。 「じゃ、帰るか」    といって先輩は先を歩こうとしたのに、すぐ止まっていた。私はうつむいてたので先輩の背中に頭が当たって驚く。 「ちょっ、なんで止まって……」  先輩の視線の先に私も自然を向ける。  そこには重ための前髪に背中くらいまでの長さでふんわりカールしてる、いかにも先輩好みのか弱そうな女の子がいた。友達と歩いている。 ………ていうか見たことある。 考えを巡らせると、答えはすぐに出た。 そうだ、姫田真梨(ひめたまり)。 同じ高校でわたしの一学年下で先輩が好きだった女の子。 高校生のときの、先輩の意中の相手。
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