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先輩の表情は明らかに見惚れてて、これはもう完全に恋に落ちている。
先輩は時が止まってるようで全然動かなくて、後ろ姿が見えなくなるまで視線を向けていた。
そっか……
わたし……何回目の失恋だ?
「真梨ちゃん……だったよな。あれ」
ちゃんと名前覚えてるんだ。そうだよね、忘れるわけ無いか。学校で噂になるくらい可愛かったもんね。
やっと時が動き出したようで私に向かってそういってきた。
「そうですね」
映画館から出て二人で自転車置き場に向かう。先輩の視界には私はもう映ってない。
「可愛かったな」
「そうですね」
「こっち来てたのか」
「そうですね」
わたしは"そうですね人形"か。
でもこっちから話を広げたらだめだ。それに思考も及ぼない。下手したら泣く。うん……、いま絶対泣ける。
先輩とこれ以上話していても真梨ちゃんの話しか出てこないことは明白だった。今お礼言って、すぐ帰ろう。
「あたし、帰ります。映画ありがとうございました。」
早口でそういって会釈する。
「送っていくけど」
「いりません、大丈夫です」
はっきりそういって私は自転車を出して逃げるように家に帰っていった
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