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最後のおせっかい
先輩を好きじゃなかったときは楽だった。
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学校の休みの日。
バイト先から自転車で家に帰っていく。
土手を通ると、入試のための課題曲を練習してる先輩を見つけた。自転車をおいて、演奏する先輩と5メートルくらい距離を取って座って演奏を聴く。
全然知らない曲テンポが早くて指がすごく動いてて、技術がすごく入りそうだな、というのはわかった。
小節ごとで練習してるみたいで、同じメロディを繰り返している。
通しで1曲聴いて思わず拍手をして称賛した。それに気づいた先輩は振り返っていた。
『あ、橘だ。よく会うな』
『ここ、家の帰り道なんで』
『そうなんだ』
もう暗くて、テキパキ片付けている。ヴァイオリンケースにしまって背負っていた。
しゃがんでいたところから立ち上がると身長意外と高くて驚く。気にしたことなかったな。
『はい。あの、なんて曲ですか?』
『これ?パガニーニのカプリス16番』
『へー、調べてみよ。なんかかっこいい曲でした。先輩の音だからかな。かっこよかったですよ』
『ありがとう』
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