私はヘタレに恋してる

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 私の足音に反応して弓を止めて振り向かれた。視線があと明らかに残念そうな顔をされた。 『ちょっと、人の顔みてなんて表情してるんですか?!失礼ですよ!』  それが藤谷先輩との最初の出会いだった。  聞けば一年生の女の子がよく聴きに来てくれていて、その子が可愛くて一目惚れをしたそうな。  それを詳しく聞き出してしまい、うだうだする先輩を放っておけずに、私がなんとか告白を出来るように情報を集めてあげた。と、そういうエピソードがある。  先輩は近くにいるといじられキャラというか、なんかちょっと突っ込みたくなる。それくらい優柔不断でどこか放っておけない人だった。  先輩の卒業式。  仲良くなった私は最後背中を押したけど、告白は失敗。先輩は見事に振られてしまった。  先輩は人気者だったから、意気消沈のなかでももみくちゃにされて、ブレザーなのにボタンというボタンを毟り取られていた。  話すような機会がなさそうだったから、私は友達と一緒に先に学校から帰路に立つ。しばらくすると、先輩が走って追いかけてきて、私を引き止めた。 『どうしました?』 『ごめん、橘が背中押してくれたのに駄目だった』 『謝ることじゃないですよ。ま、振られそうとは思ってましたし』 『え?』
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