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『だって先輩、顔はいいのにヘタレだし優柔不断じゃないですか、そういうの見抜かれますよ』
『ひっでーなぁ』
『はい、どうぞ。振られた記念に泣きながら食べてください』
飴を2つ渡してあげた。餞別のつもり。
『記念は余計だわ。じゃあ、お礼はえっと……』
先輩のネクタイを指差した。本命の子に渡すのに死守してたらしくて、ちょっとよれてる。
『それ、ください。私が思い出とともに封印しておきますから』
『わかった』
先輩は、首にしまっていた青いネクタイをとって、私に差し出した。
学年ごとにカラーが違って、私が使うことはないけれど、私が先輩の代わりに思いを葬っておこう。
受け取って、カバンにしまった。
『東京で頑張ってくださいね』
ちょっと胸を小突いてエールを送った。先輩は爽やかにちょっと辛そうな笑顔を私に向けていた。
『お前は頑張りすぎるなよ』
そういって、頭を撫でられた。
その笑顔はずるい。
キュンとしてしまった。
ちょっと放っておけない人から好きな人に私の中でグレードアップした。
とんでもない爆弾投下だ。
帰ってから高鳴る胸を抑えつつ、缶にもらったネクタイを大切に閉まった。
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