私はヘタレに恋してる

4/6
744人が本棚に入れています
本棚に追加
/131ページ
『だって先輩、顔はいいのにヘタレだし優柔不断じゃないですか、そういうの見抜かれますよ』 『ひっでーなぁ』 『はい、どうぞ。振られた記念に泣きながら食べてください』 飴を2つ渡してあげた。餞別のつもり。 『記念は余計だわ。じゃあ、お礼はえっと……』  先輩のネクタイを指差した。本命の子に渡すのに死守してたらしくて、ちょっとよれてる。 『それ、ください。私が思い出とともに封印しておきますから』 『わかった』 先輩は、首にしまっていた青いネクタイをとって、私に差し出した。  学年ごとにカラーが違って、私が使うことはないけれど、私が先輩の代わりに思いを葬っておこう。  受け取って、カバンにしまった。 『東京で頑張ってくださいね』  ちょっと胸を小突いてエールを送った。先輩は爽やかにちょっと辛そうな笑顔を私に向けていた。 『お前は頑張りすぎるなよ』  そういって、頭を撫でられた。 その笑顔はずるい。 キュンとしてしまった。  ちょっと放っておけない人から好きな人に私の中でグレードアップした。 とんでもない爆弾投下だ。 帰ってから高鳴る胸を抑えつつ、缶にもらったネクタイを大切に閉まった。 *****************
/131ページ

最初のコメントを投稿しよう!