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二人きりの音楽会
シャワーを浴びてすぐ寝てしまったから気づかなかったけど、先輩からはすぐ、帰ったラインが着ていたようで次の日スタンプで返事をした。すると、講義の合間に先輩からラインが来ていた。
“お礼する、何がいい?“
いつもの常套句。答えは決まってる。
"今回は須田景凪のメロウがいいです"
好きなアーティストの曲をいつもお礼に弾いてもらってる。
最初に、先輩が酔いつぶれて介抱してあげたとき、聞かれてから恒例化している。
物よりも、先輩の奏でる音が私にはとても価値のあるものだった。
高校の時から、先輩の音は好きだった。その好きな音色を、私だけのために先輩が奏でてくれる。それだけで嬉しい。
音大生の先輩に今までの彼女たちもおねだりしていたのかな?
____いいな。
私はこのときだけしかねだれないから、吟味して、吟味して、一曲を選んでる。
講義の合間のランチタイム。
コンビニで買った春雨スープを講義室で頬張りつつ、先輩にラインの返事をしていると、友人の葵は隣で私のスマホを覗き込んでくる。さっと画面を消すけど遅かった。葵はじとっときた目をして、問いかけてくる。
「"ヴァイオリン先輩"また振られたんだ?」
「うん、まぁ多分新しい好きな人はすぐできると思う。なんせ無自覚恋愛体質だからね」
「無自覚なんだ、質悪いなぁ」
「ほんとね」
先輩は絶対自分が恋愛体質だって気づいてない。
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