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「杏ちゃん」
体育館を離れ、一成先輩が見えなくなったところで、広夢くんが当然足を止めた。
「?」
「手が……」
広夢くんは苦笑しつつも、自分の手の方に視線を向ける。……? ああ!
「あっ。ご、ごめんね」
手を繋いだままだったことにようやく気がつき、パッと手を離す。必死過ぎて気がつかなかったよ〜。
恥ずかしさから、ついうつむいてしまう。
「そのままでも良かったんだけど」
そんな言葉をかけられ、私はパッと顔をあげる。
少しはにかんだような笑顔を浮かべている広夢くんと目が合う。好感度ゲージは、すでに半分を超えている。
これって、ものすごくいい感じ?
このままハッピーエンド迎えられるんじゃ?
「それとも、誤解されたら困る人でもいるの?」
そう言われて、悠真の顔が思い浮かぶ。
……いやいや。悠真はお助け役の幼なじみなんだから、誤解も何もないのに。
「そんな人いないよ」
浮かんだ悠真をかき消すように、首を横に振る。
「悠真はただの幼なじみだから」
「悠真って?」
キョトンとした表情を浮かべる広夢くん。
し、しまった。つい……。
墓穴掘った?
好感度は下がってないみたいだけど、どうにか切り抜けないと。こんな時に限って選択肢は出てくれないし……!
「広夢くんこそ、そういう人いないの? 千夏ちゃんとか……」
何を言ったらいいのか分からなくなって、聞き返しちゃった。
なんか、どんどん状況が悪化してる気がする。
相変わらずの残念なコミュ障ぶり。
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