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「今回バッドエンドしかないのは、始めからそう設計されていたのでしょうか」
恐る恐る聞いてみたら、三木さんは静かに首を横に振った。
じゃあ、何?
デバッグ不足? 時間が足りなくて、投げやりでゲーム発売した?
アレコレ予想している私の考えを読み取ったかのように、三木さんは話を続けた。
「プログラマーの能力は申し分ないはずです。開発期間も余裕を持っていました」
「じゃあ、何で……?」
「あえて言うなら、呪いでしょうか」
真顔でそんなことを言った三木さん。
ふざけているわけではなさそうだけど……。
「え? の、呪いですか?」
「それはさておき、このままでは我が社存続の危機です」
さておかないで?
会社存続の危機も大変なんだろうけど、私としては呪いの方が気になるよ。
平然と話を続けようとする三木さんの顔を、思わずまじまじと見つめてしまった。
「次作こそは、ハッピーエンドを迎えられるようにしないといけません。新作ゲーム開発のため、協力して頂けますか」
「……。確認なんですが、私はデバッグをしたらいいんですよね?」
仕事内容はデバッグとは聞いているものの、何だか不安になってきた。いきなり呪いとか言い出すんだもん。私も呪われたりしないよね?
「はい。ただお願いさせて頂きたいのは本格的なものでして、花井さんには実際に女子高生として学校に通い、恋をして頂くことになります」
「え。なりきりプレイですか?」
VRとか、そういうアレなのかな?
VRはまだプレイしたことがないんだけど、ゴーグルをつけると、ゲームの世界が現実のものみたいに感じられるって聞いたことがある。
「まあ、そうですね」
少し間があってから、三木さんは曖昧に言葉を濁した。
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