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◇
どんよりとした気分のまま帰宅すると、リビングでテレビを見ていたお母さんと目が合った。
「どうだった?」
「……うん」
答えになっていない答えを返す。
お母さんも何かを察したのか、それ以上は聞いてこない。しばらくして、お母さんはおもむろにソファーから立ち上がった。
チェストの引き出しをゴソゴソしていたと思ったら、お母さんはそこから長方形のベージュの額縁を取り出し、それを私に差し出した。
「何? これ」
「すごく誠実で優しい人らしいのよ。お勤めもちゃんとしたところだから安心だし、良かったら一度会ってみない?」
お見合い写真?
結婚するつもりはないけれど、とりあえず中を開いてみる。
そこには、髪の毛が大幅に後退した小太りの五十代ぐらいの男性が写っていた。
そっと額縁を閉じて、無言でそれをお母さんに返す。
「ごめん、私の好みとは少し違うみたい」
「どこがダメなの? 一度会ってみるぐらい、良いじゃない」
「どこがって……、年も離れてるし。それに、あんまりお見合いとか興味ないから」
相手の男性に失礼にならないよう、慎重に言葉を選びながら縁談?を断る。
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