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「彼氏がいるの?」
「彼氏……は、いない」
「それなら、会うだけ会ってみたら? お仕事が見つからないのなら、他の道も考えてみてもいいんじゃない?」
「他の道も何も、今は女性も働く時代だし。それに仕事が見つからないからって、結婚に逃げるつもりもないよ」
好きな人と結婚して、それで話し合ってどっちかが家庭に入るのなら、私としても全然アリだけど。いくら切羽詰まってるからって、申し訳ないけどさっきのお見合い写真の男性とは結婚出来ない。
私の発言を聞いたお母さんは視線をさまよわせ、それから私をじっと見つめた。
「でも、無職でしょ?」
……うっ!
そうだよね。手に職があったり、まともに働いてる人が言うのならともかく。「今は女性も働く時代だから(キリッ)」なんて、無職がどの口で言ってんだって話だよね。まずはちゃんと職見つけてから言えって話だよ。
ためらいがちだったにしろ、はっきりと耳に届いたお母さんの言葉。RPGだったら、今の発言で私は瀕死になっていたに違いない。
「たしかに無職だし才能も夢もないし、おまけに彼氏もいないし、コミュ障のダメ人間だよ。それでも、その人とは結婚できない」
一気にまくしたて、私は自室に戻った。
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