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◇
それから一週間が過ぎ、相変わらず私は無職生活を送っていた。ちなみに、再就職の面接は当然のように落ちた。
ボーッとスマホを眺めて時間を無駄にしていると、新着メールが届く。
『花井杏様
先日は貴重なご意見を頂き、誠にありがとうございました』
メールを開封したら、この前私が長文で抗議メールを送ったゲーム会社からだった。
『つきましては、弊社開発中のゲームソフトのデバッグをお願い出来ないでしょうか。
花井様の鋭い考察や着眼点の素晴らしさを見込み、ぜひお仕事をお願いしたいと思いました』
「お仕事……。へ? え? お仕事?」
どうせ定型コピペなんだろうなと流し読みしていたのに、信じられないようなことが書いてあって、目を疑ってしまう。
「どういうこと?」
適当に読んでいたメールをもう一度じっくり読むと、ざっくりとした仕事の説明が書かれていた。
仕事内容は、ゲームのデバッグ。
つまり、発売前のゲームを実際にプレイして、不具合がないか、誤字脱字がないかなどを確認するお仕事。
仕事は住み込みで、最短で一年〜最長で二年。
報酬もしっかり書かれていて、私の年齢にしてはかなり良い方だった。
なんか、……すっごく、あやしいな。
怒りの長文メールを送りつけたオタクをスカウトする?
それに、ゲームのデバッグはやったことないけど、こんなにもらえるものなのかな。しかも、ゲームのデバッグで住み込みって。これって、もしかして詐欺なのかな。
ツッコミどころだらけだったけど、もし本当に大好きなゲームの制作に関われるのなら最高だよね。ゲームのデバッグなら人と接することも少ないだろうから、コミュ障の私にもピッタリな仕事だし。
悩んだ末、『もう少し詳しくお話を伺えませんか』と返信することにした。
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