1、どんな選択肢を選んでも、失敗エンドになるゲーム

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 ◇  あれから何度かやりとりをして、数日が経った今日、私は例のゲーム会社に出向くことになった。  スーツを着てメイクをして、再就職の面接だとお母さんに言ってから家を出る。嘘はついてないよね、……だいぶ怪しいってだけで。  実家の最寄り駅から地下鉄で五駅ほど移動した都心部。まだ新しいオフィスビルに入り、エレベーターで七階まで上がる。すると、受付にいる若い女性と目が合った。 「花井杏と申しますが、三木さんいらっしゃいますか? 十五時から面談の約束をさせて頂いております」 「花井杏さまですね。少々お待ちください」  にこやかに応対してくれた女性が、内線で連絡を取ってくれたみたい。しばらくして、黒いスーツを着た男の人がこちらに来た。  この人が、三木さんかな。  年はたぶん私と同じくらいか、少し下くらい。身長は160センチの私よりはだいぶ高いけど、男性の平均身長よりやや高いぐらいかも?    ミルクティーベージュの猫っ毛、猫みたいにきゅっと目尻の上がったアンバーの瞳。顔立ちは整ってるにしてもツンとしてるというか、なんとなくとっつきにくそうな感じ。 「初めまして、三木悠真と申します。本日はお忙しいなか弊社までお越し頂き、ありがとうございました」  そんな失礼なことを思っていたら、丁寧に頭を下げられた。 「……あ、花井杏です。こちらこそ……?」  慌てて挨拶を返すも、今のは社会人としてダメだったかなと反省する。最近家族以外とまともに話してないから、コミュ障がますますひどくなってる気がするな。 「こちらでお話しましょう」  三木さんは顔色も変えず、淡々と告げる。三木さんに案内され、私も彼の後についていく。
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