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「先日のお話は考えて頂けましたか。ご不明な点や条件面で確認しておきたいことがございましたら、ご相談ください」
応接室のようなところで二人きりになった途端、三木さんは早速本題を切り出した。正面に座っている三木さんをチラリと見る。
「私としてはとてもありがたいお話なんですが。経験もありませんし、お役に立てるのかが心配です。最短で一年、最長で二年でしたよね?」
ただのゲーム好きというだけで、ゲーム業界に携わったこともない。ただの素人に長期間、しかも住み込みの仕事なんて任せて大丈夫なのかな。
「そうですね。ご経験のことなら心配なさらないでください。花井さんの生き方や人物像が私どもの求める人材とマッチしておりましたので」
「はぁ……。無職で、コミュ障な二十七才のニート女がですか……」
簡単な経歴はメールでのやりとりで明かしたけど、何にもいいとこないよね。つい口から思ったことが出てしまう。すると、三木さんは猫のような目を細め、ゆるく口の端を上げた。
「あの?」
笑われた? もしかして、バカにされてる?
なんか失礼な人だなと思うも、よく考えたら私の方がよっぽど失礼か。いきなりクレーム送りつけるし、しかもその相手から仕事もらおうとしてるし。
「失礼いたしました。メールでの印象とずいぶん違っていらっしゃいますね」
「あ、あれはその……スミマセン。お客様根性丸出しだったというか、自分でも言い過ぎたなって反省してます」
痛いところをつかれ、しどろもどろになって言い訳をする。
「いえいえ、はっきりおっしゃって頂けて良かったです」
口元に笑みは浮かべているけど、三木さんの目は全く笑っていない。それに恐ろしさを感じつつも、とりあえず頷いておく。
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