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「私もしばらく、今のメンバーで過ごしたいと思って」
「莉亜……」
「私たちが決めることじゃないし、選べるわけでもないけど、やっぱり何かが変わるのって不安だよね。今に満足してるからなおさら」
「そうだよね。四季には悪いけど、今は新規のお客さんの募集を停止してほしい」
さすがにそれは頼めないし、きっと今この瞬間も、どこかの不動産屋さんの情報に勿忘荘は掲載されているんだよね。
「みんなずっといられればいいのにね」
少し小さな声で、困ったような笑顔を見せて、カナンは言った。
そんな希望がかなうわけがないってわかっているけど言っておきたい、そんな表情だった。
「少なくとも、四季さん的にはそれでも困らないはずだよね。入居者がずっと同じだろうと入れ替わろうと、運営には支障ないはずだし」
「四季はそのへんゆるそうだよね。家賃もすごく安いし」
「余裕はあるみたいなことを言ってたけど、たまに本当に大丈夫なのか心配になるくらい気前がいいよね」
「あたしは気にしないことにしてるよ!」
きっとそれが正解だ。
私たちが口を出すことじゃないだろう。
「ほんと、いい家だよね、ここ」
私は床に手をついて天井を見上げて、しみじみとこう言った。
今さら言うことでもないけど、何度でも言いたいと思った。
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