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「そうだね。居心地よくて、ずっと家にいたいって思うもん」
半日にも満たない短い時間ではあるけれど、ひとりでお留守番をしたときに、全然退屈することはなかった。
みんなが帰ってきてくれるってわかっていれば、ずっと家にいるのも悪くないと、確かに思う。
「……あ」
「ん? どうしたの?」
「ううん、なんでもない」
「なになに、言ってよ。この雰囲気でそういうのやめてよ」
三号室が空いていることについて、別の考えが思い浮かんでしまった。
ただ、これを言ったら今までの話がすべて台無しになりそうな気がして、私はできれば言わずに済ませたかった。だけど、カナンがそれを許してくれそうもなかった。
「あんまり聞かないほうがいいと思うけど」
「え、なに? 聞いたらあたしが傷つくパターン? それならやめておくよ?」
「あ、いや、そういうわけじゃないよ。傷つくことはないと思うけど、複雑な気持ちになるかも」
実際私が複雑な気持ちになっている。
でも、この思いも確実に嘘じゃない。
「それならいいよ。ほらほら、言っちゃって」
カナンはとても楽しそうにしているから、案外気にならないのかも。
私だけが一人で勝手に思い悩むパターンかな。
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