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「んんー? よくわかんないよ」
「もうすぐ七月七日は終わっちゃうから、一年に一度の逢瀬もおしまい。そうしたほうがさ、なんとなくそれっぽくない」
「そう言われれば、そうかもしれないけど……」
「それに、一緒に寝るのなんていつでもできるよ。逆に今日は、私は自分の部屋に戻りたいの」
「どうして?」
いつでもできるっていう言葉に、カナンの表情はちょっと明るくなった。
実際、私がカナンの部屋で寝たことは何回かあるから、カナンにとってもお泊まり会はそこまで特別なものじゃないはずだ。
「帰ってもう一度、これを読みたいの」
私はこう言って、手に持っていたピンクの封筒をなびかせた。
これでカナンも納得してくれるはず。
「……わかった。あたしもそうする」
「うん。そのほうがなんか、七夕っぽくない?」
私とカナンにとっての天の川は、七号室と八号室の間にある壁一枚だけど、それでも織姫の気持ちを味わいたかった。
七月八日はどんな気持ちになるのか、ちょっとはわかるといいんだけど。
「……うん。莉亜のことを考えながら寝るよ」
「私も。きっと幸せな気持ちで休めると思うんだ」
「そうだね。きっとすぐに寝付けるよ」
私はどうだろう。きっといろんなことに思いを巡らせて寝付けないんだろうな。
それでも、温かい気持ちでいられることは間違いないだろう。
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