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「でも……、一緒にいるだけで今は十分で……、その先に進むことは怖いの。千里は覚悟があるって言ってくれたけどね、そんな簡単な問題じゃないよ?
だって、最初は視界に入ることも怖くて、三年間で少しずつ仕事ができるくらいまでに戻ったの。今だって男の人に触られると怖くて、嫌悪感だってある。やっと手をつなげるようになったけど、その先はもっと何年かかるかわかんない。何回も拒絶するかもしれない。
そしたら、千里だって精神的にすり減って一緒にいることが疲れていくと思う。それが怖いの。だから……、今はいいけど、何回も言うけど、無理しないで」
「バカにすんじゃねーよ。俺の覚悟がどれくらいかなんて、お前にわかるかよ。
10年前、どんだけ後悔したと思ってんだよ。今はそんな身体的な接触はどうでもいい………ていったら嘘になるけど。本当は今だって抱きしめたいけど。自分の欲より、麻海のほうが大切なんだから、別にこの先何年かかろうが、お前が隣にいるならそれでいい」
千里は、ソファから立ち上がってティッシュを私の前においた。涙を拭っていると、顔を覗かれた。
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