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抱きしめたいし、キスだってしたい。それ以上だって_____。
でも、今の望みはそれじゃない。麻海に心の準備が出来るまでは俺は待つ。いくらかかろうが、隣りにいられればそれでいいのに、あいつには半分も伝わってないように感じる。
俺はただ、隣で笑ってくれればそれだけで幸せなんだ。
8月になり、夏休みを平日に取れたので麻海と湘南にドライブに行くことにした。シャチを見に行ったあと、ドライブには何回かでかけている。今回は、夏の海を撮りたい麻海と、江ノ電の新型車両を拝みたい俺の意見を合わせると、場所は自ずと湘南になった。
いつものように家まで迎えに行くと、麻海はすでにマンションの下にいた。
小さめのリュックと、カメラケースはもう見慣れたものになってきている。サックスカラーのスキッパーワンピースは、シルエットが女性らしく爽やかだった。いつもおろしたままの黒髪をローポニーテールにしワンピースと同じサックス色の紐で結んでいた。
「千里、おはよう」
挨拶をしてくれる麻海は、再会したてよりもたいぶ笑顔が柔らかくなった。
「おはよ、いくか」
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