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「……言ったわよ。不健康で体の関係も望めないような相手、千里にふさわしくないって。そしたら泣きもしないで身の振り方考えるからって言ってた。それって千里のこと、そんなに好きじゃなくて、利用してただけかもね」
いじわるく笑う柚に、なんて残念な女性なんだろうと、冷めた視線を送ることしかできなかった。
「…………麻海のこといじめやがって……。やっぱり谷貝さんは俺のことが好きじゃなくて、俺を好きでいる自分が好きなんだな。
俺は、麻海は君が泣いてたから泣けなかったんだと思う。昔から、人見知りで感情を出すのが下手なタイプだから。だから俺は、そんな麻海が少しでも笑顔になってくれるように隣にいたいんだ。
だからもう、連絡はしないし、麻海に取り入るのもやめてくれ。またなんかしたら許さないからな?谷貝さんの親御さんに俺が全部説明する。ヒール役は買って出てやるよ。」
そういって、1000円札をテーブルに置き、立ち上がって、カフェから出ていった。すぐ柚の父親に連絡を入れて、丁寧に説明をした。怒られることはなかったし、会社同士の関係に私情で亀裂が入るようなことは絶対にしないことを、約束された。
縁談を断るだけで、そんなに精神が疲れるとは……。過去の自分の失態の尻拭いを、自分がしてるってだけだけど。
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