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「……ああ。ヒカルだろ?アイツ、最近おかしいんだよなー」
彼と仲良しの五十嵐くんの話によると、数日前から行動が怪しかったらしい。
「声かけても反応が薄いし、一緒に帰ろうって言ってもさっさとひとりで帰っちまうし」
相手に対してまったくの無反応。
授業だけでなく、遊びにも興味がなくなったみたいに一緒にいることが少なくなったそうだ。
「昨日なんてさ、ぜんぶ無視だぜ?そんで、頭抱えてこの世の終わりみたいな暗い顔してんの」
……なんだか、別人みたい。
メモを取っていたペンを強く握りながら、わたしの知っている彼を思い浮かべる。
いたずらっ子で明るい性格。
みんなではしゃぐのが大好き。
休み時間や昼休みもフルに使って、思いついた遊びを持ちかけては集まったグループですぐに教室を飛び出して行っちゃう。
学校を休んだことがないような元気が取り柄って感じの男の子。
女の子には意地悪しちゃうタイプ。
目立つグループにいるからあんまり話したことはないけど、クラスにいると存在感があってまわりが明るくなる。
彼のことが好きっていう子も多かった。
時系列をたどると、彼が変わってしまったのは月曜日ということになる。
お休みの日に何かあったのかな……。
聞きたいけど、その本人がここにはいない。
「……めずらしいよなー、アイツが休むなんて」
ちょっぴり寂しそうに、五十嵐くんは彼の机を眺めながら呟いた。
「つーかよ。お前なんでそんなこと聞いてんの?」
「……えっと、あの。化け物に襲われたって聞いたから心配になって」
「へぇー。白土ってヒカルのこと好きだったっけ?」
「えっ⁉︎そ、そういう意味じゃなくて」
急に話がおかしな方向に傾いて、びっくり。
慌てて説明するものの五十嵐くんはまったく信じていないようでニヤニヤ笑ってる。
……ああ、どうしよう。
「アイツが戻ってきたら言っておいてやるよ」
「言わなくていいよ!」
わたしは何度も首を左右に振る。
そんなことになったら大変だ。
きっと、からかわれる。
「話は終わったか?」
ドキッ
わたしのすぐ後ろで感じる気配。
背後から現れた浅風くんの姿に、五十嵐くんも目を見開いて驚いている。
「うわっ!なんだよ」
「驚かせたならすまない。そんなに楽しい話なら俺にも聞かせてくれ」
「聞かなくていいよ!」
聞き込みだけでもわたしひとりでがんばるって言ったのに……。
どんどん雲行きが怪しくなっていってる。
浅風くんが入ったらもっとややこしくなっちゃうよ。
「そろそろ行くか、地花」
あっさりと離れた浅風くんが教室の戸に触れながらこっちを見てくる。
「……もしかして。最初から聞いてた?」
「さぁ、どうだろうな」
余裕たっぷりの笑み。
この状況を楽しんでるところから見ても絶対に聞いてたに違いない。
はっ、恥ずかしい……。
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