アシカ日和

『あしかショー』出演の顛末

正解だったみたいです。
お陰様で針は無い、太い注射器を渡されて、マミは
ジョージの背中に注射を打ちました。

「ジョージくん、お医者様に注射を打たれてしまい
ましたー、しばらく安静にしてて下さいね」

お姉さんに、されるがままのジョージとマミ。
ふう、これでお役御免かと、マミが思ったその時、
「ジョージくんの具合が良くなるまで、先生に
しばらく看病して頂きましょう。
それでは次、アンドリューくん！
ジョージくんの分まで、パフォーマンス頑張り
ましょう」
調教の上手いお姉さんは、場の仕切りも
上手過ぎます。
客なのに客席に戻る機会を与えられず、
それでもスタッフから
声をかけられなければ出ることは叶わない、
『あしかショー』出演は、この場においては、
アシカに最も近づける、いわばステイタスです。
よっしゃぁーと、マミは腹を括りました。
その決意の表明に、
ジョージをヨシヨシと撫でてみました。
「ジョージくん、重くない？」と、
声までかけてみるという、すっかり、
見る側ではなく出る側に、ポジションをシフト
しました。

身体能力は、アンドリューのほうが期待されて
いるみたいで、お姉さんが奔放に投げつけてきた
輪っかを自らの首に嵌め取る芸や、
ラッコの真似が出来るアシカという触れ込み上、
アシカとしてのプライドは端っこに追いやり、
プールに入り腹を見せて手ヒレで拍手してみたり、
ラッコのヌイグルミを抱っこするという、
あざとい系の芸まで見せたのです。