14人が本棚に入れています
本棚に追加
/12ページ
うっわ、ヤバ。
こりゃダメだわ。
夜22時半、閉店間際のカフェに駆け込み、10分前に入ったダークモカとバナナアンドストロベリーホイップフローズンサンデーチョコチップカスタムの注文を背中にしょって、3階なのにエレベーターないから汗だくで登って、「だいぶ早く着いたし、チップ貰えるかな」なんて淡い期待を抱いて、届け先に向かったフードデリバリーサービス「okamotch」の配達員である私は、そんなわけで反射的に階段の陰に身を隠す。
こりゃダメだ。
だって届け先の301号室の前に、怖い顔した妊婦さんがいる。
歳は私より上だろう。
二十代半ばって感じで、アッシュ系に染めたストレートの髪も、白Tシャツにキャミワンピを合わせたコーデも可愛い。
だけどそれが全部霞むほど、目は凶暴に光ってる。
妊婦さんて幸せの象徴みたいに思ってたけど彼女はその対極の顔していた。だから余計に怖さがすごい。
殺すぞ、あるいは、殺し尽くすぞ、みたいな。
ガン決まったオーラを放ち、ピンポンを押すでもなく、大きなお腹でひたすら301号のドアを睨んでる彼女はどう考えても普通じゃなくて、とてもじゃないけど「okamotchで〜す」なんて横から言える雰囲気ではない。
最初のコメントを投稿しよう!