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「カロリーナ。君との婚約を破棄する」
「かしこまりました」
公爵家の令嬢カロリーナは、久しぶりに婚約者である第二王子アンリから呼び出された。かと思えば、案内されたのは王宮の応接室。
遅れてやってきた彼からは開口一番、婚約破棄を告げた。カロリーナが応じたことに気づいていないまま両腕を組み居丈高に言葉を続けた。
「反論は受け入れない。君が悪質な魔法を使ってサマンサを虐げていたのは周知の事実だ」
「これまでお世話になりました。それでは失礼いたしますわ」
「って、待て! 何故、抵抗しない。私との婚約が破棄されるということは君にとっても公爵家にとっても多大なる損失となるのだぞ!」
既に立ち上がっていたカロリーナは、笑みを隠すために扇子を広げた。
濃いめの金髪と吊り目の碧眼。顔立ちは少々きつめだと自覚しているので、それをわざと強調させる。
「わたくしと殿下だけの問題ではないということは、この婚約破棄につきましてはわたくしにできることはございません。公爵家を通じて王宮へお話をさせていただきますわ」
「傲慢な女だな! 性格のきつさがその顔に現れているぞ。魔力量が多いからといって威張りくさって、誰にも分からないように悪質な魔法を用いて悪事を繰り広げていたこと、必ずや民衆の前につまびらかにしてみせる。そうしたらお前はもうこの国にはいられないぞ。それでもいいのか」
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