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土を耕し、養分を隅々まで与える。適切な量の水を撒く。害となる雑草や虫を駆除する。
それらをすべて魔法でシステム化しようとしている、とニコラは説明した。
「わたくしも何か力になれたらいいのですが」
「カロリーナさんはこれからでしょう。何かいい案が生まれたら、遠慮せずに教えてくださいね」
★
出張から戻ってきたカロリーナは、さらに仕事に打ち込んだ。
それだけではなく同僚とも交流を図るように努めて、休日は共にカフェ巡りなどを楽しむようになった。
一方で、ニコラと顔を合わせる機会は減っていた。
(元々、所長はお忙しいですものね……)
カロリーナのなかに生まれた、ほんの少しの寂しさ。
気がつくとニコラを目で追うようになっていた。
すれ違うときに会釈するだけで、何故だかうれしい。
「カロリーナさん」
「はっ、はい?」
だからこそニコラから急に話しかけられて、カロリーナは固まってしまった。
「最近、解析をすごくがんばっていると聞いていますよ」
「あ……ありがとう……ございます……」
俯いたままカロリーナはなんとか声を絞り出した。
(どうしましょう。所長と目を合わせられません。心臓の音が大きくて)
「歓迎会をしていなかったことに気がつきまして。今度、皆で食事へ行きませんか?」
「あのっ」
カロリーナは勢いよく顔を上げた。
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