138人が本棚に入れています
本棚に追加
金色の瞳がやわらかくカロリーナを見ている。
「もしよければ、ふたりで行きませんかっ、……」
(わ、わたくしってば一体何を)
明らかな失言に赤く染まっていた顔がみるみる青ざめていく。
「いえ、忘れてください。是非歓迎会――」
「かまいませんよ。ふたりで行きましょう」
次の休みは、と二コラが言葉を続ける。
それを、カロリーナは半分上の空で聞いていた。
あっという間に約束がされ、二コラは去って行った。
その背中をカロリーナはぼんやりと眺める。
(今分かりました。わたくしは、所長に恋をしているんですわ……)
気づいてしまうと、鼓動はどんどん速くなっていく。
★
ついに、二コラと食事に行く日がやってきた。
仕事に手を抜く訳にはいかない。いつも以上に神経を研ぎ澄まして作業に当たる。
「なんだか今日、雰囲気が違うね?」
「そ、そうでしょうかっ」
同僚に指摘されてまごついてしまい、あやふやにごまかすカロリーナ。
そこへ別の同僚がやって来た。
「ノルマンドさんに来客だよ。第一応接室で待ってる」
「……来客、ですか?」
まったく身に覚えがないまま、カロリーナは応接室の扉をノックした。
「失礼します」
「カロリーナ! 会いたかった!」
「きゃっ!?」
上座から立ち上がったのは、フードをすっぽりと被った怪しい男だった。
最初のコメントを投稿しよう!