138人が本棚に入れています
本棚に追加
しかしカロリーナにはその声に聞き覚えがあった。
「……もしかして、殿下でしょうか……?」
「よく分かったな! 流石、私の婚約者だ!」
ばっとフードを外したのは、カロリーナの指摘通り、第二王子アンリだった。
どことなくやつれて目の下には隈ができている。
(婚約者、ですって?)
カロリーナは眉を顰めかけたが、こほん、と咳払いをして平静を装う。
「お久しぶりでございます。このような格好でお会いすることをどうかお許しください」
ローブを羽織っていることもあり、カーテシーも行わない。
しかしアンリは不敬と捉えないようだった。
「かまわない。今日はお前を迎えに来たんだ。本来の婚約者として」
「……はい?」
流石にカロリーナも変な声を出してしまった。
「お前と婚約を解消してから不運が続いたので、逆恨みで呪いでもかけられたかと思っていたんだ」
アンリは神妙そうな面持ちで続ける。
「しかし、神殿で調べてもらったところ、その逆だったんだ!」
「逆、とは?」
「お前の魔力は普段から少しずつ漏出していたらしく、それが加護となって私を守ってくれていたそうなんだ。お前が傍にいないと私は不慮の事故で命を落としてしまうかもしれないと神殿から言われた。ありがたく思うがいい。この私が直々に迎えに来てやったのだから、コムン王国へ戻ろう」
最初のコメントを投稿しよう!