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「僕と彼女はお付き合いさせていただいています」
「……っ!?」
弾かれるようにカロリーナはニコラを見上げた。
すると視線が合い、二コラは片目を瞑ってくる。『黙っていなさい』という意味なのだろう。
「なので、どうかお引き取りください。アンリ殿下」
「何故私の名前を……」
「申し遅れました。僕はニコラ・シルフィード。風の名を受け継ぐ精霊一族の長であり、ここの所長を務めています」
(せ、精霊、ですって!?)
驚いたのはカロリーナもである。
「もしあなたが彼女へ危害を加えるようでしたら、精霊王の名において、コムン王国に天罰が下ることでしょう。それでも無理やり連れて帰ろうとなさいますか」
「くっ……!」
流石にアンリも慄いたようで、フードを深く被り直す。
「必ず迎えに来るからな!」
そして叫ぶようにして言い残すと逃げるように去って行った。
「やれやれ。行ったようですね」
「……」
カロリーナは言葉を紡ごうとするが、うまく唇が動かない。
代わりに頭を下げてきたのはニコラだった。
「勝手に恋人宣言をしてしまってすみません。そうでもなければ、殿下は引かなかったでしょうから」
「い、いえ。こちらこそ助けてくださってありがとうございました……それよりも……」
(精霊だから、畑全体に効果がある魔法を使えたのね)
カロリーナの意図をニコラも汲んだようだった。
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