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最後まで彼は娘の隣国行きを渋っていたが、王立であれば一生安定した生活が送れると己を納得させたらしい。
カロリーナは、ビロード織の長いローブを身に纏う。
ドレスとは違いどっしりとした制服。それだけでも気分が昂揚してくる。
(いよいよ勤務初日。どんな方々が働いていらっしゃるのかしら?)
教会のような見た目の研究所。
門をくぐり衛兵に挨拶して、通されたのは事務所だ。
室内には既に誰かがカロリーナのことを待っていた。
(ローブだとカーテシーはしづらいから、会釈でいいかしら?)
「はじめまして、カロリーナ・ノルマンドと申します。本日よりこちらでお世話になります」
「所長のニコラです。困ったことがあれば遠慮なく相談してください」
立ち上がって、二コラは握手を求めてきた。
長身痩躯の男性だ。カロリーナと同じローブを羽織っているが、胸元に研究所のシンボルマークであるブローチをつけている。
髪の毛は肩にかかるかどうかくらいの長さ。髪も瞳も淡い金色をしている。
細身なのにしっかりと大きな手のひらを、カロリーナは握り返した。
「研究所で働ける日を心待ちにしておりました。よろしくお願いいたいます」
「そう言ってもらえて光栄です。地味な作業の方が多いので、飽きずに続けてもらえるとうれしく思います。今日は事務手続きだけで帰ってかまいません」
幾つかの書類に目を通しサインをする。
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