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「越してきたばかりなのでしょう? この国は多種多様な者が住んでいます。街歩きをして、文化に触れてくるといいですよ」
カロリーナはその言葉通り、街へ繰り出すことにした。
気候や風土は元の国と似ているが、魔法国と名乗るだけあって、人間以外の種族も多い。
石畳の道を、獣人や精霊が普通に歩いている。
カロリーナにとってその事実は、聞いてはいたが実際に目にすると、衝撃的だった。
舗道の両脇には似たような煉瓦造りの商店が立ち並んでいる。
ガラス張りの窓が珍しくて店内を覗くと、耳の先が尖っている店員が見えた。
(このアクセサリーショップ、精霊が営んでいるのね!)
好奇心からカロリーナは店内へと足を踏み入れる。
ちらりと店員がカロリーナへ視線を向けてきたが、声はかけてこない。
どうやら棚や台に並べられたアクセサリーのひとつひとつに魔法付与がされているようだった。
(魔力補強のピンキーリングですって。せっかくですし、買ってみようかしら)
「すみません。こちらをくださるかしら?」
カロリーナは無愛想な店員へと声をかける。
「はい。サイズ直しは必要ですか?」
「必要ないと思いますわ。はめてみてもいいかしら」
「えぇ、どうぞ」
シンプルなイエローゴールドのピンキーリングは、右小指にぴったりなサイズだった。
「すてき。このまま貰っていくわ」
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