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いろいろなしがらみから解放されたカロリーナは、肩の荷が下りたように穏やかな日々を送れていた。
「因みに、そのピンキーリングはどうしたんですか?」
「これのことでしょうか? この国に来て初めて購入しましたの。精霊が営んでいるお店だったので、つい惹かれて。魔力補強の効果があるそうなので、仕事の助けにもなると考えました」
「似合っていますよ。相性がいいんでしょうね」
ありがとうございます、とカロリーナははにかむ。
「仕事について、派手な内容を期待してはいませんでしたか?」
「派手とは?」
「爆発の威力を増した火炎魔法を創生したいとか……どんな状態異常も一瞬で解消できる浄化魔法を探したいとか……」
ふふっ、とカロリーナはやわらかな笑みを浮かべた。
魔法国は魔法の研究を輸出もしている。
中には他国同士で争いに使われることもあるという。あまり想像したくはないが、魔法によって故意に奪われる命だってあるのだ。
「わたくしは生活に根差した魔法がもっと広まればいいと考えていますわ」
「では今度、一緒に出張へ行きませんか?」
「出張ですか」
「国境の近くの痩せた土地で、魔法だけで野菜を育てる実験をしています。これがうまくいけばどんな場所でも食べ物に困ることはなくなるでしょう。この十年ほどメインで取り組んできた研究です」
カロリーナは、是非、と二つ返事で承諾した。
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