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カロリーナとニコラは、一日かけて目的地へ辿り着いた。
悪路は馬車酔いを引き起こすほど。
山々に囲まれて空気は乾燥しているし、空は厚い雲に覆われている。聞くと、通年このような気候なのだという。
「今日はもう遅いですから、宿舎でゆっくりと休んでください」
「分かりました。お疲れさまです」
青い顔でカロリーナは上司に挨拶してひとりで宿舎へ向かった。
硬いベッドの横に荷物を置く。
少し休んだら散歩してみようと決めて、カロリーナは横になる。
今の自分は、かつて想像もつかなかった場所に来ている。
あのまま国に残っていたら、衣食住、なにも欠けることなく暮らせていたのかもしれない。しかし、今の方が楽しいという確かな想いがあった。
馬車酔いから回復してきたところで、カロリーナは部屋の外へ出た。
木造二階建ての宿舎の廊下からは広大な畑が見渡せる。
(ここでいろんな実験をしているのね。……あれは、所長かしら?)
畑の奥に長身の男性が立っているのが見えた。
服装からニコラだと判断する。
ニコラは両腕を畑へ向かって突き出した――次の瞬間、ぶわぁっと畑に風が舞い上がり、作物が空中に浮きあがった。
「まぁ!」
カロリーナは思わず快哉を上げた。
(所長というだけあって、きっと、すごく魔力量が多い方なんだわ……)
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