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そして、日々の業務に集中していて、二コラについては何も知らないのだと気づく。
他の職員とも日常会話くらいはするが、お互いのことは深く尋ねたことがない。
カロリーナは宿舎から出て、畑へと駆けて行った。
「所長!」
「カロリーナさん。休んでくださいと言ったでしょう」
「少し横になったらよくなりましたわ。それよりも、今、どんな魔法を使われたんですか?」
二コラが目を見開いた。
どうやらカロリーナに見られているとは思いもしなかったようだ。
足元のかごにたくさん積まれた野菜を指差す。
「見た通り、野菜を一度に収穫する魔法です」
「あんなに広範囲へ効果のある魔法、見たことも聞いたこともありませんでした。本当にすばらしいですわ」
「いやいや、そんな目を輝かせて褒めていただくことではないですよ」
二コラが困ったような表情に変わる。
それでもカロリーナは食い下がらない。
「所長はすごいです。わたくしもそういう魔法使いになりたかったんです」
「カロリーナさん……」
その夜は、二コラが収穫した野菜たちが食卓に並んだ。
翌朝は早い時間から畑に関する魔法の勉強。
カロリーナもローブから作業着に着替えて、畑へと足を踏み入れた。
(お父さまが見たらびっくりして倒れてしまうかもしれないわ)
カロリーナはくすりと笑みを零した。
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