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 だが、穏やかな青空の窓外へ、すっかり意識を泳がせているような彼女だったので、 「先生」  ボリュームがあがった。 「えっ」  それでやっと茫々とした面が戻った。 「伝達事項すべて終わりましたので、麻希さんの……」  続利は先生の前に置かれているピンク色の封筒に視線を落とした。 「あ……あ、そうね」  頷いた彼女は、するとそれを手にとった。 「ではこれから、みんなへあてた、麻希さんからのメッセージを読みます」  閲覧テーブルの前面に立った先生から告げられると、下級生たちからざわつきがあがった。 「そんなものがあったんですか!?」  その中でひときわ大きくあがった糊竹の驚きに、  ―――先日の初七日、三年生だけで麻希家へお参りにいき、そこで受けとった。  と先生は明かした。 「俺、聞いてないよ~」  立ちあがりながらの抗議へ、梅増が負けない音量で返した。 「そのころあんたはまだ部外者だったんだから、誘われる資格はなかったの。あれは文芸部員のみでの行動だったのよ」 「だったら、下級生たちは~? 彼女たちだって文芸部員じゃな~い」  女言葉の口を尖らせ、 「みんなもいきたかったわよね~。ずるいわよね~。自分たちだけでね~。ね~、ね~」  と、まわりの下級生たちにかけたやつへ、 「うっとうしいわね~、あんた~!」  眉根を寄せた垣出が、嫌悪まるだしの声音をぶつけた。 「あまり大人数いっても迷惑だからって、先生が決めたのよ! 先生の決定に文句があるなら、前に出て面と向かっていいなさいよ!」  受田がびしっと重ねた。  途端、 「あ、そうでしたか。さすが賢明なご判断で」  やつはしおらしく座面に戻った。  先生の美顔には、緩んだ頬があった。  折り畳まれた便箋を開く音が隅々まで届くような、静まり返った室内だった。  メッセージは一年生全体へ向けられたもので始まった。  文芸部の慣わしに対する疑問や、「あくまで自分の考えとして」と断りの入った、うけそうな文章の書き方、顧問の機嫌のとり方などが、そこには面白おかしくあった。  顔も知らない一年生に送るメッセージゆえに、そういった形にしたのだろう。―――と思っていた矢先、麻希の想いを代弁する先生の口は、 「砂岸(さがん)さんへ」  一年生のひとりの名を発した。
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