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 で、結局先生にお願いするしかないかっていう結論になって……。  でも僕、うまいこと説得できそうにないから、その、羽厨子くんにお願いできたらって思って……」  伏し目がちでいった浦和に驚愕した。  他人の気持ちをおもんぱかり、そして気を配る性質など、まったく持ち合わせていないと思っていた浦和が、自分と同じ願いを抱いていたなんて……。 「実はぼくもそれ、考えてたんだ」  驚きに次いで芽生えていたささやかな感動の中で返すと、そっと窓へ顔をふった。  いつもなら、残っている部員たちと雑談を交わしているか、でなければ職員室へすぐに戻っている彼女が、今日に限っては、壁に寄りかかるようにして、明るい表へ視線をゆだねている。―――今まで見たことのない情景。  自らの世界に没入しているふうの、そんな彼女のようすだったから、下級生たちも寄りつくことを遠慮し、にぎやかさをそのままに、三々五々退室していったのかもしれない。 「私もそのこと、気になってたの」  続利の声が、意識と視線を引き戻した。 「だから今日、先生に相談しようと思ってて」  いうが早いか、毎回顧問への提出が義務づけられている会合記録を手に立ちあがった彼女は、 「つき合ってくれる?」  ぼくと浦和を交互に見た。  ちょっと用があるとは、このことだったようだ。      *  窓際で腕を組み、しばらく思案の表情を見せていた先生は、おもむろに顔をよこすと静かに口を開いた。 「でも、完結していないものを人目にさらすのは、かえって可哀想かもしれないわ」 「さらす」の言葉が若干の衝撃をもたらし、  たしかに一理ある―――。  と、思わせた。  だが、続利は食いさがった。 「しかし、できている部分は推敲がなされている感じだって、麻希さんのお父さんはおっしゃってました。ならば、彼女の力量から考えて、たとえ完結はせずとも、読むに値するものではあると思うんです」 「うん。―――それでもね、書いた本人が納得しているものかどうかは、わからないじゃない」  柔らかな反論だった。 「ですが―――」 「私もできることなら載せてあげたい。でもやっぱり、無暗にはね……」  続利をさえぎるようにして、先生はいった。  四人だけの室内に、間が降りた。  と、 「でもね」  静寂を割った先生は、 「ありがとう―――って、麻希さん、きっと思ってるわ」
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