プロローグ

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キーン、コーン、カーン、コーン‥‥。   チャイムの音と共に、目の前の教室から漏れ出ていたガヤガヤがぴたりと止まった。 早まる鼓動を落ち着かせるために、目をつむって深呼吸。 鼻から吸って、口から吐いて‥‥。 「うぅ、やっぱり緊張するなあ‥‥」 鈴原(すずはら)真昼(まひる)、十四歳。 今日は待ちに待った、転校初日です! (一言目でシーンとかなったらどうしよう‥‥。やっぱり一発ギャグとか入れた方が良かったかな)   お父さんの転勤が決まって、急遽通うことになった東京の中学校。 ずっと一緒だった村のみんなと離れるのは寂しかったし、知らない人ばかりの都会なんて、初めはすごく怖かった。 だけどそれ以上に、待ちきれないほどわくわくしてたのも本当で。 緑いっぱいの景色ももちろん大好きだったけど、たくさんの色がキラキラきらめく宝石みたいなこの世界は、ずっとわたしのあこがれだった。   この扉の先には、どんなに素敵な出会いが待ってるんだろう。 そう考えるだけで、自然と頬がゆるむ。 (あんなに練習したんだから、きっと大丈夫) トントンと拳で軽く胸を叩き、両手の人差し指で、にっと笑顔を作ってみせる。 と、ちょうどその時。 「鈴原〜、入っておいで〜」 「は、はい!」 (き、来た‥‥!)   先生の声に大きく返事をすると、わたしはもう一度深呼吸し‥‥ 扉の向こう、新しい世界へと踏み出した。
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