13人が本棚に入れています
本棚に追加
キーン、コーン、カーン、コーン‥‥。
チャイムの音と共に、目の前の教室から漏れ出ていたガヤガヤがぴたりと止まった。
早まる鼓動を落ち着かせるために、目をつむって深呼吸。
鼻から吸って、口から吐いて‥‥。
「うぅ、やっぱり緊張するなあ‥‥」
鈴原真昼、十四歳。
今日は待ちに待った、転校初日です!
(一言目でシーンとかなったらどうしよう‥‥。やっぱり一発ギャグとか入れた方が良かったかな)
お父さんの転勤が決まって、急遽通うことになった東京の中学校。
ずっと一緒だった村のみんなと離れるのは寂しかったし、知らない人ばかりの都会なんて、初めはすごく怖かった。
だけどそれ以上に、待ちきれないほどわくわくしてたのも本当で。
緑いっぱいの景色ももちろん大好きだったけど、たくさんの色がキラキラきらめく宝石みたいなこの世界は、ずっとわたしのあこがれだった。
この扉の先には、どんなに素敵な出会いが待ってるんだろう。
そう考えるだけで、自然と頬がゆるむ。
(あんなに練習したんだから、きっと大丈夫)
トントンと拳で軽く胸を叩き、両手の人差し指で、にっと笑顔を作ってみせる。
と、ちょうどその時。
「鈴原〜、入っておいで〜」
「は、はい!」
(き、来た‥‥!)
先生の声に大きく返事をすると、わたしはもう一度深呼吸し‥‥
扉の向こう、新しい世界へと踏み出した。
最初のコメントを投稿しよう!