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酒場にて
アエルは妖術師に会った後、一人酒場にいた。
アエルはポケを待っていた。
そのポケが酒場にやって来て言う。
「こんな昼間から、酒場に私を呼び出して。何の用ですか?」
ポケは嬉しそうにアエルを見た。
ポケは色が黒く、背がひょろっと高い、30代後半の男性だ。
髪は黒髪の短髪。目はくりっと丸く、瞳の色は漆黒色。口調は丁寧で優しい紳士だ。名をポケという。
アエルもポケを見て嬉しそうに笑う。
「ポケ。こんな時間なのに、来てくれたのかい?」
ポケがアエルの隣の席に座っていう。
「あたりまえです。アエルに呼ばれたら、私は地の果てにだって参上しますよ」
アエルがポケの顔をマジマジと見て言う。
「ポケ、そんなセリフは好きな女にだけ言っていろ」
それからアエルが店主に言う。
「おい、ポケにも酒を頼む。葡萄酒が良い」
アエルが勝手に酒を頼んだ。
「私は葡萄酒よりエールの方が好きなんだが……」
アエルが言う。
「エールなんぞ飲むな。それはトーマ国の酒だぞ。我々は葡萄酒を飲むのだ!」
ポケはヤレヤレという顔をした。
「そんな事を言い始めたら、旨いものは何1つ食べられなくなりますよ。牛肉だってトーマ国の特産物だ」
「ふん、あたいは羊の肉でいいよ」
「全く、アエルには困ったもんですよ」
店主が葡萄酒をポケの前に置いた。
ポケが恨めしそうに葡萄酒を眺めた。
ポケが尋ねた。
「ところで、私になんの用です?」
アエルが羊紙をポケに渡した。
羊紙を見てポケが嘆いた。
「羊紙ですか……。羊紙に書かれたことなんか、ろくな要件じゃありませんよ」
アエルが葡萄酒を一気に飲み干して言う。
「そのとおり。だからポケを呼んだんだ」
ポケが絶望して言う。
「もっといい話の時に、私を呼んでくださいよ」
アエルが言う。
「あたいら、相棒じゃないか?」
ポケが言う。
「私達、いつから相棒になったんですか? 相棒なんて嫌ですよ」
アエルが微笑む。
「じゃ何になりたいんだ?」
ポケがモジモジして言う。
「もっと深い関係です」
アエルにポケの話は難しい。
「ふーん、ポケに言っている意味がよく分かんないぜ」
ポケが言う。
「本当は分かっているくせに。焦らさないでくださいよ」
アエルがニヤついて、はぐらかすように言う。
「そうだ。エールも頼んでやろうかい? おい店主、エールを頼む。あと牛ヒレステーキも持ってきておくれ」
ポケが、羊紙を見ながら言う。
「羊紙の契約の内容を遂行するのに、エールや牛ヒレステーキじゃ、割に合いませんよ。羊紙で書かれた契約書ってことは、契約の相手は王族ですよ」
ポケが羊紙を開く。
ポケの表情に、絶望の色が浮かんだ。
羊紙にはサン王子の名が記されていたのだ。
ポケがその文字を見てため息をつく。
アエルがポケの肩を抱いて言う。
「良いじゃないか? 頼むよ。一緒に組んで仕事をしておくれ。流石にこれは、あたい一人では出来ない」
肩を抱かれてポケは照れたのか、頬を染める。
「ヤレヤレ。わかりました。惚れた弱味です。その代わり、キスしてください」
アエルがポケの唇にキスをした。
キスされて、ポケがうっとりとする。
「満足したか?」
「ええ、でも、本当は……」
何かポケが言おうとして、その時、店主が今度はエールをポケの前に置いた。
ポケは頭を左右に振った。
「いえ。いいのです」
ポケは一気にエールを飲み干した。
エールの炭酸がポケの喉を焼いた。
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