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槍の名手紅孤狼アエルと妖術師
頃合いで言えば、地球の歴史の中世頃と、似通った世界があった。
その世界は、文化の違う国がいくつも存在していた。
ただし、その世界の中には魔術や妖術を使う者もいる。
その国の中の1つ、大国トーマにアエルは住んでいた。
アエルは名の通った便利屋だった。
真紅色の長い髪をして、いつも馬頭槍を持って歩いているので、すれ違うものの目を引いた。身長は2メーター近くあり、体は筋肉が覆っていた。
目鼻立ちは美しく。アーモンド型の二重目、サファイアブルーの瞳が印象的だった。年は30歳を越えたあたりで、声は野太く、遠くまで通る声をしていた。
便利屋のアエルは、用心棒を請け負うことが多く。この日も船着き場で、夜明けから荷受けの用心棒をしていた。
アエルが荷受けの用心棒を終えて、酒でもいっぱい引っ掛けて帰ろうと、歩き出した時だった。
背中から声をかけられた。
「アエルさんですか?」
振り返ると、小柄な男たち5人組だった。
150センチ前後の背丈しかなかった。
皆フード付きのマントを被って、リュックを背負い、ロングブーツを履いていた。
「あんた、誰だい? その背格好と雰囲気で、 おおよそは見当がつくがぁ……」
男の1人が言う。
「じゃぁ、尋ねる必要などないじゃないですか?」
アエルがニヤッと笑った。
「その独特の雰囲気からすると……。あんたら、エタナラルラ国のお抱えの妖術師だろう?」
男の一人が答える。
「正直に返事をするのは、野暮ってもんじゃないですか? なのでアエルさんの思う答えを、アエルさんは信じなさったら宜しいかと思います」
もう一人の男が言う。
「私どもは、馬頭槍の名手・紅孤狼の異名を持つ、便利屋アエルさんに仕事を依頼に来たものですよ」
アエルが意地悪そうに言う。
「生憎ですが、あたいは名も名乗らない奴や、知らないやつの依頼は受けないことにしているんだよ。帰っておくれ」
男の1人が言う。
「紹介状を持って来たのです」
「はぁ! 紹介状だって?」
アエルは仕方なく紹介状を見た。
アエルは紹介状を読みながら、悪態をつく。
「まったく。何処のコンコンチキがこんなもの書きやがった!」
アエルは紹介状を読み、顔色が青くなる。
「こりゃ、また大層な依頼が舞い込んだものだ。ダメダメ。あたいはね、命は大事なんだよ。銭もほしいが、命には代えられない」
男の一人が言う。
「だったら、いいのですか? あなたの大事な子どもたちが皆殺しになりますよ」アエルが血相を変える。
「なんだって?私の子供たちを盾にする気かい?」
「致し方ないのです。あなたに頼る以外方法もなかったのです」
アエルが主張した。
「私の子どもたちを人質にとれる力も有る。こんな大層な紹介状をもらうツテもある。それだけの力を持っているんだ。自分たちでこの仕事をしたら良いじゃないか?」
男の1人が脅す様に言う。
「我々が動くわけには行かないのです。もし我々が動いて、我々の仕業だと公になれば、戦争が起こりかねないのですよ」
アエルはため息をついた。
「どうしてあたいなんだ! 他にも適任者がいるだろう? ソッポとかさぁ」
商売敵のソッポを、暗にアエルは推薦した。
すると男たちが言う。
「あれは……。ダメです」
もう一人の男が言う。
「ああ、役立たずだ」
アエルが理由を聞く。
「なんで?」
男の1人が言う。
「大怪我して入院しています」
アエルが驚き、聞く。
「なんでソッポが大怪我したんだ?」
男の一人が言う。
「試験をさせてもらったんですよ」
「ああ、弱かった」
アエルは嫌な予感しかしない。
「なんだって? それはどう言う意味だい」
男の一人が神妙な顔で言う。
「アエルさんも、数日前、見知らぬ者たちに襲われたりしませんでしたか?」
アエルは青ざめる。
「あれは、あんたがたの仕業だったのか? 今回は誰に恨まれたのか分からず、不思議だったんだ」
男たちが頷く。
「それで、アエルさんは見事合格なさった」
男たちが拍手して言う。
「おめでとうございます」
「おめでとうございます」
「おめでとうございます」
「おめでとうございます」
「おめでとうございます」
アエルは嫌な気持ちでいっぱいになった。
「全くめでたくなんか無い! 子供を返せ」
「少々アエルは誤解している様です。我々はアエルさんのお子さんを、拐っていませんよ」
アエルが聞く。
「じゃ、皆殺しって……。人質にしたんじゃないのか?」
男の一人が言う。
「子どもたちに、毒を飲ませたんです」
アエルは焦って言う。
「ちょっと待っておくれよ。そりゃないだろうー」
男の一人が平然という。
「その毒は、飲み続けなければ、死にますし。2年飲み続けたら、飲み続けた毒が致死量まで貯まって、やっぱり死にます」
アエルは声を荒らげて言う。
「なんて卑怯な毒なんだよ」
男の1人が言う。
「この依頼を遂行したら、解毒薬を差し上げます」
別の男が言う。
「アエルさんは、この依頼を受けるしかないんですよ」
アエルは青ざめる。
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