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トイレに行った時とは別の意味でのドキドキを抱えながら会場に戻る。
「どうした?」
青くなっている私に気づいたのだろう、すぐに顔を覗き込まれた。
「……あのね、お義父さんに疑われてるかも」
「あの人来てんの!?」
「さっき会ったの。私たちの馴れ初めとか色々聞かれて」
北条君がさりげなく周囲に視線を向ける。
「あー……監視がいるな」
「え!?」
「見られてる、俺ら」
私たちが本当に夫婦なのかどうかチェックされてるということ?
「契約婚ってバレるのはよくない。なんとか交渉しようと美桜に余計なコンタクト取ってくる。受験控えてるからそれは絶対避けたい」
「どうしたら……」
「イチャイチャするか」
「え……?」
今も十分距離近くてイチャイチャしてるようなものだと思うけど……!?
戸惑って頷けないでいたら、
「きゃ」
腰を抱かれ引き寄せられた。
腕に手を添えてただけとは違う、体の左面がしっかりくっついてから体温が伝わってきて。私は内心ではあわあわしてるのに、
「リップ少し取れてる? 塗り直さなくていい?」
「う、うん……!」
「じゃあ行こうか、ハニー♡」
甘い声を出してラブラブな夫になりきっているから凄い。
私も頑張らなきゃ。
「あー、喉乾いちゃった、な? だ、だ、だ……」
甘くてラブラブな感じ、語尾にハートマークがつくみたいに、そしてダーリンって呼べばいいかな?
「だ……だー!」
だめ! ダーリンとか私は言えない!
そんな発音、人生で一度もしたことない!
「……っ!」
北条君、笑いを堪えてるのか頬がハムスターみたいになってぶるぶる震えてる。
もう、全然だめ……。
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